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「おなかのヘドロ(宿便)は女性の大敵」
理学博士
 岡部 薫  著
宿便のことが全部わかる・カラダの仕組みをチェック

第2章イオンは皮膚からも吸収される

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自律神経がなぜ大事なのか


猛然と襲いかかるゼンソクにめった打ちにされた私は、浜坂工業という自分の会社を息子と甥にまかせて転地療養に専念することになりました。北海道の札幌郊外に土地を買い、小屋を建ててひとりで暮らし始めたのです。転地療養などといえばいかにも聞こえがいいようですが、私はそこを死に場所と考えていました。

私はバイオリンを弾いたり、絵を描いたりすることが道楽でしたが、そんな気力もありません。ぼんやりと時間を過ごし、おなかがすくと自分でカユを炊いて食べるだけです。冬になると東京へ帰り、春を待ってまた北海道に渡るといった繰り返しでした。

そのうち、どうせ死ぬならいまのうちにこの世の見納めに北海道の風景でも見ておこうという気になり、小旅行を何度か試みました。そして私は網走の海岸で渡り鳥たちの止まり木をみて感動したのです。

それ以来、自分で自分の健康を何とか取り戻そうと、私は奮い立ちました。私は手当たり次第に医学書を読みあさりました。そして、南山堂の『医学大事典』を繰り返し広げているうちに、私はふとひとつの疑問にぶつかったのです。

自律神経がなぜ大事なのか

その辞典の中には5万数千の病気が収録されているのですが、病気の原因が自律神経によるものとされる項の記載のあまりにも多いことに気がつきました。これがひとつのヒントになって、私は人体の構造から勉強に取り組み、いとも不思議な自律神経のはたらきを知り、自律神経に不可欠なイオンへと進んでいったのです。

こうして、私は自分のゼンソクを治そうと多くの本を読みましたが、途中はもうダメだと思ったことがあります。それはイオンを知るには地球の生い立ちを知らなければなりません。地球を知るには天文学の勉強が必要です。それ以外にも勉強すること、調べることが山ほどあり、自律神経を治す療法などはとうてい私の一代、二代で、それも発作止めの薬を飲みながらできる問題ではないと何回も思いました。

「天の神様、地の神様、どうか助けてください」

私はあまりのつらさに、何度も叫んで祈るしかありませんでした。そんなある夜、空の星はどうして長生きするのだろうか、ととても不思議に感じました。太陽系の星たちは、太陽の引力によって運行されています。いわば統一されたコントロールセンターでもって回転しているわけですが、もしも太陽のエネルギーがなくなったならどうだろうと考えました。おそらく、地球も土星も木星もみんなバラバラになってしまうに違いありません。

それと同じく、人体が長生きをしないのは、自律神経のエネルギーであるイオンが減退するからだと思いました。そんなことを考えているときに頭の中に浮かんできたのが、小宇宙の図式でした。私たちの人体は、胃腸、肝臓、腎臓などの内臓器官、自律神経、イオンの3つの調和によって、健康が保たれています。太陽のように内臓器官を統率している自律神経は、人体のいわばコンピュータ司令部で、心臓ポンプを動かしているのも、肝臓でつくられるグリコーゲンを各器官に必要量を、規則正しく、順序よく、寸分の狂いもなく配送しているのも、自律神経のコントロールなのです。しかし、そこにイオンがなければ、それらの調和もバラバラになってしまうに違いありません。

私は、いつしか太陽系の宇宙と同じく、人体も恒星である自律神経を中心に、胃腸、肝臓、腎臓などの惑星をもつ小宇宙であると考えておりました。つまり、太陽系の宇宙の生命が長いのは、太陽と9つの惑星との間に、引力という統率性があったからなのです。その太陽系の宇宙と臓器官が統率されています。そのイオンをつくっているところが、胃腸です。

糖をグリコーゲンに改造して全器官に配している肝臓、人体の老廃物を処理している腎臓、皮膚の組織に大切なステアプシンを製造している膵臓、血液によって回収されてきた炭酸ガスを排出する肺、炭酸ガスの回収とともに各器官に化学物を輸送する血液、廃物を処理する泌尿、そして皮膚呼吸によって肺を補助し、汗腺によって腎臓を補助する皮膚・・・これらの内臓器官は、現代医学の領域です。しかし、自律神経指令のコンピュータ、自律神経の原動力であるイオン、内臓器官の原動力である糖、胃腸と食べ物、そしてイオン療法などの図式は、現代医学を基盤にした私なりの新しい仮説です。


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ドロ水入湯療法に失敗する


私は多くの本を読んでいるうちに、イオンについていろいろなことがわかってきました。

  1. 生物はイオンの中で生まれ、イオンは生物の原動力であること。

  2. 人体の器官を統率しているのは自律神経である。その神経はイオンときわめて密接な関係をもっている。

  3. イオンの不足によって自律神経は衰弱する。

  4. イオンは、土、温泉、植物に含まれる。

  5. イオンを吸収できる器官は、胃腸の他に皮膚面にもある。

病気はつまり、自律神経の失調を治すには、まず不足したイオンを補充することが第1条件です。そこで、イオン水をつくって、皮膚から浸透させる入湯療法を行えば、私のゼンソクは解決できるという確信をもちましたが、問題はイオンをどのようにしてつくるかということでした。

私は、土が水に溶解するとイオンが遊離するという学説に基づいて、ドロ水入湯療法を試みました。これは大変なことになりました。

ドロ水入湯療法に失敗する

ドロ水入湯でまず発見したことは、30分や1時間くらいならいいのですが、それ以上長く入っていようものなら、皮膚がヤケドしてしまいます。ちょうど壁土をつけるような状態ですから、皮膚呼吸ができないので息苦しく、酸欠が起きてきます。からだに湿疹ができたり、皮膚が腐ったりします。

それにドロ水からあがって、からだを洗ってみると、ドロの粒子が皮膚の中にたくさんつまっています。このドロの微粒子をとるのがまたひと苦労です。なにしろ、ドロが皮膚につまっているのですから布団には寝られません。私は中国にある臥薪嘗胆(がしんしょうたん)の故事にならって、ムシロを敷き、ムシロをかぶって寝たものです。そのドロ水も、各地から関東ローム層の土とか、いろいろな土を取り寄せて何回か試してみましたが、どうもいけません。

それならばと、ドロを溶かして沈殿させ、きれいなうわずみだけを汲み上げて、入ってみました。すると、肌がうまい具合にふやけて、皮膚にしみこんだドロの微粒子がとれ、呼吸が楽になってきたようなこともありました。しかし、本には皮膚呼吸は全体の0.5%と書いてありますが、私の実験では、20%くらい呼吸していると感じたものです。

私はまた、植物がイオンをもっているという学説に基づいて、あらゆる植物、極端な話をすれば大根の葉も、ミカンの皮も、手近にある草も、手当たり次第に鎌で切ってきて、水に入れてみました。植物は水に熱を加えると、すぐ腐ってきます。その臭い植物の湯にも、鼻をつまんで入りました。手をかえ品をかえ、いろいろな植物湯にはいってみましたが、それでもゼンソクは治りません。治らないどころか、草の中に毒草が混じっていたのかもしれませんが、痒くなったりして、これも失敗でした。



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